会社による評価・処分の問題

会社による評価・処分の問題

会社による評価・処分の問題

会社による評価実績

会社による評価実績

通常、会社は、各従業員の業績評価について一定のルールを策定し、そのルールに従って、定期的に従業員の勤務成績を評価し、当該評価に従って、昇進・昇格・ボーナスの金額等を決定したり、場合によっては降格処分を行ったりします。

しかし、業績評価を行うのは、通常、各従業員の上司であり、上司との意思疎通が上手く図れなかったりすると、不合理な業績評価が下され、その結果、昇進・昇格が著しく遅れる、不合理な降格処分が下されるということも少なくありません。社内の人事部門にきちんと「不服申立て窓口」が設けられている場合であっても、当該人事部門が適切な対応をしてくれない場合もあります。

こうした、会社の不適切な対応は、他の従業員や過去の例に照らし、不合理な処分であるとして、違法と評価される場合もあります。合理的なのか不合理なのかは、最終的には法的評価の問題ですので、まずは専門家に相談されることが重要です。

業績評価以外の会社の指揮命令・処分

業績評価以外の会社の指揮命令・処分

ア. 人事異動・転勤・出向等の業務命令

会社の従業員として仕事をしている以上、会社から人事異動・転勤・出向等の様々な業務命令を受けることがあります。しかし、それらは、従業員にとって、いつも受入れられるものとは限りません。従業員は、会社のこうした業務上の命令に常に従わねばならないのでしょうか?

会社は、労働契約上、「労働力の処分権」を有しているとされ、会社は、その権限に基づいて、各従業員の個別の承諾が無くとも、労働者の職務内容や勤務地を決定することができます。また、裁判所も、一般的には、会社に対し、「労働力の処分権」については、広い裁量を認める傾向にあります。

しかし、会社の「労働力の処分権」は、その根拠を労働契約に置くものですから、就業規則や労働協約などに何の規定もない場合は特に問題となります。

まず、会社に就職した際、「労務の種類や勤務場所について限定されている場合」は、会社の一方的な命令により人事異動・転勤等を命じることはできません。

また、業務上の必要性がなく、不当な動機・目的で行われたり、従業員の利益を害する態様で行われた場合には、「権利の濫用」として違法・無効となる場合もあります。

イ. 懲戒処分(戒告・減給・降格・解雇)

従業員は、働きぶりが不満足である、会社の命令に従わない、会社に有形無形の損害を与えた等の理由で、会社から懲戒処分を受けることがあります。懲戒処分には、戒告・減給・降格・解雇等の種類がありますが、最も重い処分が懲戒解雇です。

違法な懲戒処分によって、従業員が蒙る不利益は図り知れません。

こうした懲戒処分が「違法・無効」か否かを考えるには、以下の要素を法的に考える必要があります。
(1)懲戒処分の根拠があるか否か
従業員に対して不利益処分をする場合は、あらかじめ、労働契約(就業規則を含みます)に、会社の懲戒権についての取り決めがあることが必要です。

従業員による問題行為があった後に設定した就業規則に基づいて懲戒処分を行うことも、同じ問題行為について2回懲戒処分を課すことも認められません。

労働契約上何の根拠もないのに、突然、懲戒処分を課すことは通常許されません。
(2)懲戒事由に該当するか否か
労働契約(就業規則)に懲戒事由がきちんと規定されている場合であっても、問題行為が懲戒事由に該当しなければ、懲戒処分は認められません。

就業規則等の取り決めは、通常、抽象的・包括的な文言で規定されているため、問題行為が懲戒事由に該当するか否かについては、法律的な判断が必要です。

例えば、会社から時間外労働や休日労働を指示されたがそれに従わなかった場合、当該職務命令違反が懲戒事由に該当するか否かについては、
  • そもそも当該職務命令が労働契約の範囲内なのか
  • 当該職務命令は法令違反ではないのか
  • 当該職務命令に従わないことに正当な理由が無かったのか
を検討して、懲戒事由に該当するか否かを判断することになります。
(3)当該懲戒処分が「相当」か
仮に、従業員の問題行為が、懲戒事由に該当する場合であっても、会社が課した懲戒処分が当該懲戒事由に比して著しく過重である場合には、懲戒処分は、やはり「違法・無効」です。

問題行為の「性質・態様その他の事情に照らし、当該懲戒処分を科すことは社会通年上相当なものか」という法的評価を検討することが必要になります。

この場合、「類似事案で、他の従業員は、過去・現在、如何なる懲戒処分を受けているか」も重要な検討要素です。
(4)懲戒処分に至る手続は「適正」か
例え、従業員の問題行為が懲戒事由に該当し、当該懲戒処分が「相当」なものであるとしても、従業員に対する不利益処分である以上、会社は、従業員に対し、あらかじめ「懲戒事由に該当することを通知」して、「弁明の機会」を与えなければなりません。ある日、突然、会社から一方的に「懲戒処分」を課すことは、「懲戒権の濫用」となる可能性が高いと思われます。
これらの(1)ないし(4)の要素を検討する際には、過去の裁判例も参考にしながら、法的評価を行い、その上で、会社に対するしかるべきアプローチを行うことが重要です。

労務問題(メンタルヘルス・出産育児休業・介護休業等)

労務問題(メンタルヘルス・出産育児休業・介護休業等)

従業員がどんなに優秀で仕事熱心であっても、病気・出産・育児・介護等の理由で、一時的に労務を提供することが困難になることがあります。

又、病気・出産・育児・介護による休職からの復職に際し、会社から不利益に取り扱われたり、場合によっては辞職せざるを得なくなることもあります。

ア. 病気(メンタルヘルス)の場合

傷病休職については、従業員は、一般的に、労働契約(就業規則)の規定に従い、一定の休職期間が認められるものの、休職期間を終了しても病気が治らず、勤務に復帰できない場合には、退職せざるを得なくなります。

これに関連して、近時、問題になっているのはメンタルヘルスの問題です。

会社には「職場の労働者の生命及び身体等の安全を保護するように配慮する義務」があります。従って、業務により発病した精神障害により労務提供が不能になった場合には、
  • 労働時間等の労働条件が適正か
  • 労働者の健康状態を把握・管理していたか
  • 個別の労働者の事情に配慮しているか
等々が問題になり、会社がこうした環境整備を怠っている場合には、会社側に損害賠償責任が生じる場合もあります。

また、この場合、労務の提供が一時的に不能になった場合であっても、会社は、従業員の状況をよく確認・把握して、配置転換等により従業員が提供できる労務内容に変更を行う必要があり、こうした確認・把握もせず、配置転換や休職制度を活用する努力も尽くさずに、「病気が治らないから」と解雇すると「解雇権の濫用」として違法・無効になる場合もあります。

従業員の側から言えば、会社によるこうした配慮や措置がきちんとなされたか否かを評価し、場合によっては、会社による不利益な取扱いに対し、法的な対応をする必要があります。

イ. 産休・育休の場合

労働基準法・育児介護休業法では、女性従業員の母性保護の観点から、出産前及び出産後、一定期間の休業を義務づけています。但し、出産前については、従業員側からの請求がないと与える必要はなく、出産後も6週間を経過後は、従業員が職場復帰を希望した場合には休業させる必要はないということになっています。

同様に一歳未満の乳児を育てる女性従業員については、毎日育児時間を与える義務があるほか、女性従業員の申出があれば育児休業を認めねばなりません。
そして、育児休業は男性従業員にも認められています。


さらに、多くの企業では、法令を上回る期間の休業等が就業規則を根拠に認められる場合がありますので、従業員は、法令だけではなく、自分の会社の就業規則をよく確認することが必要です。また、法令は頻繁に改正されますので、そちらもチェックが必要です。

なお、会社が昇給・昇格等の勤務評価をする際、女性従業員が、出産前後に休業をしたことをもって、不利な資料として考慮することは、法の趣旨から言っても違法とされる可能性が高いと言えます。

但し、「仕事上の経験が不足する」という理由でなされた評価は違法とまでは言えないことからすると、不利な勤務評価が、「産休・育休を取得した」ことに直接起因するのか否かの判断は極めて個別具体的に、且つ様々な状況証拠を元に行う必要があるでしょう。

ウ. 介護休職の場合

家族の介護をするために休職をすることが必要な従業員の利益を保護することも重要です。

産休・育休と同様、介護者の取扱いについては、法令(育児介護休業法)で会社が最低限守らなければならない事項が規定されています。介護のための休職を取得する場合は、就業規則の規定とも併せて、よく検討することが必要です。

介護休職を取得したことをもって、従業員を不利益に取り扱うことが許されないことも、出産・育児のための休職の場合と同様に考えられます。

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